スーパーのレジ横、コンビニのカウンター、銀行の窓口――
ふと目にしたことはありませんか?
「カスハラとなる行為があったと判断した場合、対応をお断りさせていただきます」
そのポスターが私たちに問いかけるのは“お客様第一”の一方で、
そこで働く人々の声にも耳を傾ける必要があるという現実です。
今、サービス提供の最前線で働く人を守ることが、企業の責務として改めて問われています。
この記事では、「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」とは何か、なぜ問題なのか、
そしてこれから企業が講じるべき対策とは何か、について整理します。
近年、社会問題として注目されている「カスハラ」。
令和7年(2025年)の改正労働施策総合推進法では、カスハラに該当するための三要件が明確に規定されました。
①職場において行われる、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、
②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
③当該労働者の就業環境を害すること
この三つをすべて満たす場合に、法的にカスハラと位置付けられます。
ここで重要なのは、「すべてのクレームがカスハラになるわけではない」という点です。
サービス改善につながる建設的な意見や、正当なクレームは企業にとって貴重な情報であり、
決して排除されるべきものではありません。
問題となるのは、要求内容の妥当性や、その伝え方(「暴言」「脅し」「人格否定」「過度に長時間拘束する行為」
「SNSでの晒し行為」など、伝え方や手段が社会的に許容し難い水準に達していないか?)です。
では、なぜカスハラが社会問題となっているのでしょうか。
厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和3年度)では、顧客からの迷惑行為を経験した労働者が
相当数にのぼることが明らかになっています。
暴言を受け続けることによる精神的ストレス、心身の不調、離職といった影響は深刻であり、
企業にとっても人材流出や生産性低下といった大きな損失につながります。
「お客様の言うことは絶対」という時代は終わり、働く人を守ることが企業の責務として求められているのです。
さらに重要なのは、カスハラが「労災」の評価基準にも明確に位置づけられたことです。
厚生労働省は令和5年(2023年)9月、「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を改正し、
心理的負荷評価表に「顧客や利用者等からの著しい迷惑行為」を具体例として追加しました。
これにより、カスハラによって強い心理的負荷を受け、精神障害を発症したケースが、
労災として判断される可能性がより明確になりました。
企業としては、従業員を守るための記録・相談体制・対応フローの整備が、これまで以上に重要になります。
こうした状況を踏まえ、改正労働施策総合推進法(公布:令和7年6月11日)は、
カスハラ対策を「ハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務」として明確に位置づけました。
施行日は令和8年(2026年)10月1日と定められており、企業には具体的な対応準備が求められています。
(出典:厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)
企業が取り組むべき対策としては、社内マニュアルの整備、対応記録の管理、
従業員を守る姿勢の明確化、相談体制の整備などが挙げられます。
従業員が安心して働ける環境を整えることは、結果としてサービス品質の向上にもつながる重要な経営課題です。
もし、社内規程の整備や実際のカスハラ対応に不安がありましたら、
どうぞ私たち社会保険労務士にご相談ください。
法改正への対応、指針に沿った体制づくり、研修、マニュアル作成など、専門家として必要なサポートを丁寧に提供いたします。
