令和8年度助成金の見通し~概算要求から読み解く3つのポイント~

令和8年度助成金の見通し~概算要求から読み解く3つのポイント~
労働に関するお知らせ

令和8年度助成金の見通し~概算要求から読み解く3つのポイント~

投稿日: 2026-01-16

令和8年度助成金の見通し~概算要求から読み解く3つのポイント~ 

はじめに

毎年8月から9月にかけて、各省庁から翌年度の予算に関する「概算要求」が公表されます。
これは、政府が「来年度、どのような政策にどれだけの予算を使いたいか」を示すもので、
助成金制度の方向性を知る重要な手がかりとなります。
令和7年8月、厚生労働省から令和8年度(2026年度)の概算要求が公表されました。
今回の記事では、この概算要求資料を詳しく分析し、令和8年度の助成金がどのような方向に向かうのか、
企業経営者や人事担当者の皆様が今から押さえておくべきポイントを解説いたします。

 

※重要な注意事項

本記事の内容は概算要求段階の情報であり、今後の国会審議を経て変更される可能性があります。
正式な制度内容は予算成立後に発表される予定です。

 

令和8年度助成金の3大トレンド

令和8年度の厚生労働省概算要求を分析すると、以下の3つの柱が明確に打ち出されています。

1.物価上昇を上回る賃上げの現実

政府は「賃上げこそ成長戦略の要」という基本方針のもと、全国津々浦々で物価上昇に負けない賃上げを実現・定着させることを最重要課題としています。
特に中小企業・小規模事業者への支援として、**「賃上げ支援助成金パッケージ」**という形で複数の助成金を組み合わせた支援体制が構築される見込みです。

2.人への投資(リスキング・人材育成)の強化

デジタル化の進展や産業構造の変化に対応するため、労働者のスキルアップ支援が大幅に強化されます。
特に注目すべきは、従来の「訓練費用の助成」だけでなく、訓練後の生産性向上に必要な設備投資まで助成対象とする新しい仕組みが導入される予定です。

3.人手不足対策と多様な人材の活躍推進

深刻化する人手不足に対応するため、非正規雇用労働者の正社員化支援、高齢者の雇用促進、育児・介護との両立支援など、多様な人材が活躍できる環境整備への支援が手厚くなります。

 

注目の助成金5選

 

【最注目】人材開発支援助成金(533億円)

令和8年度概算要求で最も注目すべき変更点が、この助成金に予定されている**「設備投資助成」の新設**です。

【新設予定】設備投資助成

  • 内容:従業員に職業訓練を実施した後、その訓練で得た知識・技能を活用して生産性向上を図るための機器・設備等を購入した場合、その費用を助成
  • 助成率:購入費用の50%
  • 助成上限:受講者数に応じて最大150万円
  • 対象:中小企業のみ

 

【新設予定】中高年齢者実習型訓練(仮称)

  • 対象:45歳以上の労働者
  • 内容:OFF-JT(座学)とOJT(実習)を組み合わせた訓練
  • 経費助成:60%(中小企業以外は45%)
  • 賃金助成:800円/時間・1人(中小企業以外は400円)
  • OJT実施助成:
          ・最低6か月:20万円/1人(中小企業以外は11万円)
          ・最低2か月:10万円/1人(中小企業以外は9万円)

 

活用のポイント:これまでは「人を育てるための費用」しか助成されませんでしたが、令和8年度からは「人を育てて、その人が活躍するための設備も導入する」という一連の流れを支援してもらえるようになります。DX推進や省力化設備の導入を検討している企業にとって、非常に使い勝手の良い制度となる見込みです。
また、中高年齢者向けの実習型訓練も新設され、経験豊富な中高年人材のスキル転換支援が強化されます。

 

キャリアアップ助成金(1,022億円)

非正規雇用労働者の処遇改善を支援する助成金として、引き続き大きな予算が確保されています。

【新設予定】非正規雇用労働者の情報開示加算

  • 内容:非正規雇用労働者に係る情報開示を新たに行った場合の加算措置
  • 助成額:1事業所当たり20万円(大企業15万円)

 

【継続】正社員化コース

  • 有期雇用→正規雇用:80万円(大企業60万円)※重点支援対象者
  • 正社員転換後6ヶ月の賃金が転換前と比較して3%以上増額が必要

 

【継続】賃金規定改定コース

  • 有期雇用労働者の基本給を3%以上増額改定した場合に助成
  • 3%以上4%未満:4万円/1人
  • 6%以上:7万円/1人(上限100人)

 

活用のポイント:「年収の壁(106万円・130万円)」対策として注目されている「短時間労働者労働時間延長支援コース」も継続されます。
パート・アルバイトから正社員への転換や、非正規雇用労働者の処遇改善を検討している企業は要チェックです。

 

業務改善助成金(35億※前年度15億円から倍増)

事業場内の最低賃金を引き上げ、生産性向上に資する設備投資を行った中小企業・小規模事業者を支援する助成金です。

【変更予定】制度の見直し

  • 賃金引上げ額を4コース制から3コース制に再編
  • 地域別最低賃金改定日の前日までの一定時期については、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額について、地域の実情に応じた特例措置を実施

活用のポイント:予算前年度の2倍以上に増額されており、政府の最低賃金引上げ支援への本気度が伺えます。静岡県の最低賃金も年々上昇しており(令和7年度:時給1,097円、令和7年11月1日発効)、人件費負担が増える中小企業にとって、生産性向上と賃上げを同時に実現できる重要な支援制度となります。

両立支援等助成金(392億円)

育児・介護と仕事の両立支援に取り組む事業主を支援する助成金です。

【新設予定】柔軟な働き方選択制度等支援コース - 子の看護等休暇制度有給化支援

  • 内容:法定の子の看護等休暇を上回る基準で有給化した場合に助成
  • 助成額:制度導入時30万円(中小企業のみ対象)
  • 主な要件:
        ・年次有給休暇と同等の賃金を支払う有給休暇であること
        ・1年度あたり10労働日以上付与すること
        ・時間単位で取得可能であること(中抜け可能)
        ・令和7年10月1日以降に制度を有給化すること
        ・就業規則等に規定し、一般事業主行動計画を策定・届出すること

 

【新設予定】介護離職防止支援コース - 介護休暇制度有給化支援

  • 内容:法定の介護休暇を有給化した場合に助成
  • 助成額:
       ・制度導入時30万円(中小企業のみ対象)
       ・有給の介護休暇が年10日以上の場合:50万円

 

活用のポイント:少子高齢化が進む中、育児・介護による離職を防ぐことは企業の人材確保において重要な課題です。
法定の休暇制度を上回る内容で有給化することで、従業員が安心して働ける環境を整備でき、さらに助成金も受給できる制度です。
特に介護休暇については、年10日以上の有給化で50万円の助成が受けられる点が注目されます。

 

65歳超雇用推進助成金

高齢者の雇用推進を支援する助成金です。

【拡充予定】継続雇用促進コース

65歳超雇用推進助成金の継続雇用促進コースでは、定年引上げ等の措置に対する助成額が大幅に拡充されます。

■70歳以上への定年引上げの場合(例:60歳→70歳)

  • 対象人数1~3人:60万円(前年度40万円)
  • 対象人数4~6人:120万円(前年度80万円)
  • 対象人数10人以上:240万円(前年度160万円)
    ※助成額は対象人数と引上げ幅により異なります。
    詳細は厚生労働省の概算要求資料をご確認ください。

 

【拡充予定】高年齢者無期雇用転換コース

  • 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換
  • 助成額:30万円→40万円に増額

活用のポイント:人手不足が深刻化する中、高齢者の活躍促進は重要な経営課題です。
定年延長や継続雇用制度の見直しを検討している企業は、この機会を活用できます。
特に対象人数が多い企業ほど助成額が大きくなる点が特徴です。

 

今から準備すべきこと

令和8度の助成金を効果的に活用するために、今から準備しておきべきポイントをまとめます。

 

1.経営計画と連動させた検討

助成金は「申請すればもらえる」ものではありません。
生産性向上や賃上げといった具体的な成果が求められます。
来年度の事業計画を立てる際に、以下の視点を盛り込みましょう。

  • 従業員のスキルアップが必要な分野はどこか
  • どのような設備投資が生産性向上につながるか
  • 賃上げの原資をどう確保するか
  • 非正規雇用労働者の処遇改善をどう進めるか
  • 育児・介護と仕事の両立支援をどう強化するか

 

2.就業規則・賃金規定の整備

多くの助成金では、就業規則や賃金規定の整備が要件となっています。
特にキャリアアップ助成金では、正社員転換制度や賃金規定の改定が必要です。
また、両立支援等助成金では、新設される休暇制度の有給化支援を活用する場合も、
就業規則への規定と一般事業主行動計画の策定・届出が必要となります。
今のうちに社内規程を見直しておくことをお勧めします。

3.デジタル化への対応

助成金の申請は電子申請が主流になりつつあります。
**GビズID(法人共通認証基盤)**の取得がまだの事業主様は、早めの取得をお勧めします。
取得には一定の時間がかかりますので、今のうちに準備しておきましょう。

4.専門家への相談

助成金制度は複雑で、要件を満たしているかどうかの判断が難しいケースも多くあります。
また、複数の助成金を組み合わせることで、より効果的な活用が可能になることもあります。
社会保険労務士など専門家に早めに相談することで、スムーズな活用が実現できます。

まとめ:早めの情報収集と準備が成功の鍵

令和8年度の助成金は、「賃上げ」「人への投資」「多様な人材の活躍」という3つの柱を軸に、
中小企業の経営課題解決を強力に後押しする内容となる見込みです。

特に注目すべきは以下の3です。

1.人材開発支援助成金の「設備投資助成」新設
-従業員の育成と設備投資を一体的に支援

2.業務改善助成金の予算倍増
-最低賃金引上げと生産性向上の同時実現を支援

3.両立支援等助成金の休暇有給化支援新設
-子の看護休暇・介護休暇の有給化で最大50万円

ただし、繰り返しになりますが、今回ご紹介した内容は概算要求段階の情報です。
国会で予算案が成立して初めて正式決定となります。
詳細な要件や支給額は、予算成立後に発表される各助成金のパンフレットやリーフレットで必ずご確認ください。

 

参考資料

  • 厚生労働省「令和8年度概算要求の概要(雇用環境・均等局)」
  • 厚生労働省「令和8年度概算要求の概要(労働基準局)」
  • 厚生労働省「令和8年度概算要求の概要(職業安定局)」
  • 厚生労働省「令和8年度厚生労働省所管予算概算要求関係」
  • 静岡労働局「令和7年度静岡県最低賃金の改正について」